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(主に)京都ラーメン日記 ときどき麺以外

主に京都のラーメンを食べた記録です。麺食いなのでラーメン以外の麺も食べます。時々麺以外も食べます。

ラーメン太郎

かつて私が右京区に住んでいたとき、嵯峨野高校の向かいにあるこの店にはよく訪れた。

臭みのないこってりスープが好きで、また夜遅くまで開けておられるので夜中に小腹が空いたときなどにふらりと訪れたのだ。おつまみ系のメニューも豊富で、おつまみをつまんでちみっと飲んでラーメンを最後に頂くと言う使い方も出来た。

ラーメンのメニューもいろいろあり、それぞれこってりとあっさり、その中間のハーフを選ぶことができるので、バリエーションは非常に多い。

お店のおすすめは、赤穂の塩を使った「天塩」だが、私は醤油が好きだった。醤油の、それもこってり。あっさりだとどこか物足りないのだ。


そうして一時期入り浸ったラーメン太郎だったが、右京区からの転居と共にこちらの方に来る機会も無くなったので、転居以降ばったりと訪れなくなった。

ふと懐かしくなり訪問してみたことがあるのだが、何故か決まってお休み。ここは不定休なのだが、よくぞこれだけ不定休を当てられるなあと自分に感心した。


そんな去年の夏の終わり。そろそろまた行こうかと思っていた矢先に、「ラーメン太郎」さんが火事に遭われたというニュースを耳にした。正直いつ再開されるのかと心配していたのだが、12月にリニューアルオープンされたと言う話を聞いて、今回ようやく訪れることができた。


店の外見は随分変わってしまったが、店内のレイアウトはあまり変わっていない印象で、L字型のカウンターとテーブルが二つ。久し振りにカウンターに座ると、ひどく懐かしい感じがするというよりはなんだが落ち着くところに落ち着いたというような安心感に包まれる。ああ、そう言えばこんな感じだったなあ。このカウンターでビール飲んで、ラーメン食べて。

もちろん注文は醤油のこってり。店内獣臭なし。


久しぶりのこってり醤油は粘度も高く、コラーゲンが唇に粘る。おお、これは明日になれば、私の肌はコラーゲンでプルプルになっているのじゃないだろうかと錯覚するくらい。実際は、朝起きても普通におっさんの肌でした。笑


そんなわけで、久しぶりの太郎ラーメンはとても美味しく頂きました。これで禁煙だったら最高なんだが…笑

帰り際に100円割引券を頂いた。昔あったっけ? 笑
しかしこれで随分お得感が増しますね。




日をあらためて、天塩のこってりを頂きました。

やっぱり醤油の方が好き。

天塩は、こってりじゃない方がいいのかもしれないなあとふと思ったり。
またあらためてあっさりの方を食べてみようかな。



ラーメン太郎

昼総合点★★★☆☆ 3.5



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喫茶マウンテン

某大学での用事は思ったより早く終わったので、返す刀でマウンテンに「山登り」することにした。少し時間もあるしね。ご存知「奇食の館」である。


マウンテン1


マウンテン2




正直「奇食」には全く興味がないので、「マウンテンで敢えて普通のスパゲッティを食べる」という通常の発想と逆のことことをしてみようかとも思ったのだが、メニューを眺めているうちにそれもなんとなくもったいない気がしてきた。

例えば「ナポリタン」を注文したとしても、多分日本中の喫茶店で食べられることのできる、ある意味予想通り教科書通りのナポリタンを食べることになるだろう。

それもまたなんとなく悔しい気がしてきた。やっぱりここにしかないメニューを注文しなくては!



そんなわけで、どっぽりとお店の陰謀にハマってしまった感があるが、まあ仕方がない。こうして「あえて引っかかってみる」というのもまた楽しおすえ。


じゃあ何にしようかとじっくりとメニューを眺めてみる。正直甘いスパゲティ系統には興味がなく、しばし逡巡する。

メニューをにらみながらうんうんと考え込んでいたその時、たちまち雷鳴のように入口のメニューを思い出した。


マウンテン3



「辛口ナマズ煮込みスパゲティ」


こ、これだ! どうでしょうこのメニュー。「ナマズ」にも突っ込みどころがあるし、「煮込みスパゲティ」にも十分突っ込める。そうなると、一見平凡に見える「辛口」も、実はとんでもない辛さなのではないだろうかという期待が高まり、もうこれしかないのじゃないかという確信にほどなく変わった。


自分の中での興奮が最高潮に達し、私は我慢できずに、密かな「名古屋メシ愛好家」である妹に思わずメールを送ってしまった。


「マウンテンなう。これより辛口ナマズ煮込みスパゲティを注文する。オーバー」

たちまち妹から矢のような返信が返ってきた。

「なんと! 遭難しないよう幸運を祈る。オーバー」


そうなのだ、完食出来ないことをこの店の愛好家は「遭難」と称する。私も男に生まれたからには「遭難」だけは避けなければならない。嗚呼、もっとましなメニューにしておいた方が良いか? ここまで来てまだ迷うか?

などとたった一人興奮していた私は、注文を取りに来たお姉さんの声で我に返った。

「ご注文は?」

興奮冷めやらぬ私は、その興奮を抑えきれずに注文を取りに来たお姉さんに一気呵成に注文した。

「か、辛口ナマズ煮込みスパゲティを…!」

「はい少々お待ち下さい」

と、お姉さんはクソ面白くなさそうに注文を受けた。どうやら興奮していたのは私だけだったようだ。まあ、お姉さんにしてみれば変なメニューを意を決して注文する客なんて日常の風景にしか過ぎないのだろう。


無事注文を終えたので、ようやく心に余裕のできた私は周りを一眺めした。隣のパーティーは緑色のパスタに生クリームを絡め、一心不乱に手繰っておられる。その隣のパーティーは、みなさん普通にお茶を飲んでおられる。このカオス感も非常に面白い。この時点で登山に臨んだ甲斐があったと私は思った。


人間観察に夢中になっていると、あっという間に注文した品がやって来た。正直トマトベースのスープからはとてもいい香りがする。おや、意外にと言っては失礼かもしれないが普通に美味しく頂けるのでは? と私は一人興奮した。


マウンテン4



なぜか箸とスプーンが付いてきたので、まずは箸でスパゲッティを啜った。箸でつまんだ麺を口に近付けるとトマトスープと、加えられた乾燥オレガノのよい香りが近付く。

一口頂く。と、その瞬間たちまち私は咽込んだ。辛っ! 辛いよ予想外というか予想以上の辛さ! 辛すぎて咳が止まらない!

正直、マウンテンを舐めていたのかもしれないと私は恐れ慄いた。咳き込みが止まると、私は再びまじまじと鍋の中を覗き込んだ。やはりトマトとオレガノのよい香りしかしない。

もう一度同じように麺を頂く。啜ると同時にまた咳が止まらなくなった。辛いよ! これ、唐辛子を親の敵のように入れた上に、タバスコを一瓶丸ごとぶち込んでないか? と思うくらいの辛さ。たちまち以前に訪れた韓国ソウル市の、激辛焼肉を思い出したレベル。人生の中で、こんなに辛い物を食べたことがあろうか…!

二口で箸が止まってしまった。気が付くと口は開けっぱなしになっている。涎まではさすがに垂らしてはいなかったが、辛すぎると自然と口が開くものなのだということを私は自分の体で実感した。

口を開けたままはーはーしていると、隣のテーブルのお姉さんが私の方を胡散臭そうな目でじっと見ていた。あっ、これは申し訳ない。


そんなわけで、なぜか用意されていた取り皿に麺や具をうつしてふーふーしながら頂くことになった。熱いからふーふーしているわけではないのだが、ふーふーしないと気が済まないのだ。麺は太めの麺で、芯はまるで残っていない、いわゆる「ナイデンテ」というやつだ。煮込みスパだからまあ当然だろう。

咽込みながら麺と具はなんとか頂いた。が、鍋の中にスープがたんまりと残っている。

このまま知らんふりをして帰ることもできなくはないが、それじゃあ「遭難」である。勇気を振り絞ってスープを一口頂いたが、トマトの酸味とオレガノの風味が入った0.3秒後くらいにとんでもない辛さが脳天を貫いた。

マウンテン5


…ここでやっと思い出したが、そう言えばメインの一つは「ナマズ」だった。あまりの辛さで飛んでしまった感は否めないが、ナマズはまあ普通の白身であった。臭みもなくっていうか辛すぎたからかもしれんがっていうかもしかするとあの辛さはナマズの臭みを消すためか、などと私は辛さで麻痺した脳みそでぼんやりと考えた。


そんなわけで点数化はしません。次回訪問する時は誰かに何かを食べてもらう時でしょうね。そうか、そう言う客でこの店は持っているのか!


マウンテン




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まことや

名古屋の某大学にちょっとした個人的な用事があり、休日の朝から一路名古屋に向かった。

結構タイトなスケジュールになる予定だったので、以前からひそかに楽しみにしていた「名古屋メシ」を楽しむのは正直なところ難しいかと思っていたのだ。だが思ったよりスムーズに名古屋に着くことが出来たということもあり、少し時間的余裕が出来た。

そんなわけで、ちょっと考えた結果以前から気になっていた味噌煮込みうどんの名店「まことや」を訪問することにした。名古屋にあるラーメン屋めぐりもちらりと頭をかすめたのだが、やはり現地のソウル麺料理である味噌煮込みが良いかと思い直した。


実は味噌煮込みうどんは今まで幾度か頂いたことがあるのだが、正直あまり好みではなかったのだ。太めの生麺を、濃い味噌味の汁でぐつぐつと煮込む。結果としてなんだか生煮えのようなごわごわの麺となる。好きな方はこの食感がたまらないというのだが、つるつると手繰れないこの麺が私は正直苦手であった。

しかし、結論から言うと、ここ「まことや」の味噌煮込みうどんはとても旨かった。それは、こちらのお店が、味噌煮込みうどんの特性というものをしっかりと理解しておられるからだと思う。


ちょっと話は飛ぶが、味噌煮込みうどんの麺がつるつるとした麺にならないのは、煮込みに用いるうどんの打ち方にもある。私は趣味と実益を兼ねて自分でもうどんを打つことがあるが、小麦粉に対して結構な量の塩分を使用する。塩をしっかりと使うことでグルテンが引き締まり、しこしこもっちりした食感が生まれる。

うどんの中に含まれる塩分は、茹でる時にその多くが茹で汁に出ていくが、塩分が出ていくのと引き換えに水分が入り込み、芯までしっかりと煮えるのである。

ということは、普通に塩分をしっかり使って打った麺を煮込むと塩辛いつゆになってしまう。そうなると「味噌で煮込む」料理が成立しないので、味噌煮込みうどんのうどんは塩を使わずに打たれるのだ。その代償として、つるつるとした食感は犠牲になるし、また残念なことに芯まで煮え難いということになる。


以上が味噌煮込みうどんの食感に関する、いわば「理屈」である。
そして、私はそんな味噌煮込みうどんがちょっと苦手だった。


などと言いながら、やっぱり地元に根付いた麺料理が欲しくなるのです。いつも、もしかしたら今まで食べていたものが外れなだけで、実際には五臓六腑が腹の中から飛び出して踊り喜ぶくらいの旨いものがあるのだろうと信じて。


さて、お店に着いた時点では結構な行列で、近くの「山本屋」に浮気しようかと少し逡巡したが、思い直して並んでいるうちにあっという間に席に案内されたのでひと安心。当たり前のように相席となった。

注文を聞かれたが、せっかく遠方からはるばるやって来たので、トッピングが全部入った「親子みそ海老」をチョイスした。「親子」というのは鶏肉と卵がトッピングされているということで、加えて海老の天ぷらが入っている。これで1103円(税込)は正直安いのではないかと思った。

などとどうでもいいことをつらつらと考えていると麺が到着した。店内は味噌と鰹出汁の香りが充満しているが、さらにぐつぐつの丼から立ち上る香りが凄い。


まことや



さっそくうどんを引っ張り出して、取り皿に移す。麺は今までの店と異なり極太麺ではなく、平打ちの麺。よーくふーふーしてさっそく一口頂いたが、しっかり芯まで煮えておりつるんとお腹の中におさまった。

これは今まで食べた味噌煮込みとは違う。

濃いめの出汁で煮込むのであれば、これくらいの麺が一番よいのだと口の中が悟った。時折平打ち麺がほぐれずに重なったままになり「太麺」になっているのがあるが、これはご愛敬か。


海老天だが、海老は結構大きめ。衣はしっかりと厚めで揚げ置きのものだが、煮込むには厚めの衣で揚げ立てでない方が良い。しばらくぐつぐつの出汁に沈めておくと衣が良い具合に出汁を吸ってちょうど良い具合になる。

そんなわけで麺をつるつると手繰る。正直あっという間に麺がなくなってしまったので、しっかり食べたい場合は大盛りが良いかもしれない。もし次回があるとすれば、私は迷わず大盛りを選択するだろうと思う。


出汁も頂いたが、とても濃そうなビジュアルとは裏腹に、出汁が良く効いていてとても飲みやすい。一口、また一口と頂くうちに、あっという間に飲み干しそうになってしまった。

具は他に鶏肉と卵、くたくたに出汁で煮込まれているお揚げ、ネギとしっかり戻した干し椎茸とかまぼこが入っていた。夢中で麺を頂いてしまったので、具が残る。正直ビールが欲しい! (残念なことに飲み物は置いておられません)


そんなわけで夢中で頂きました。煮込む麺の太さはちょうど良いくらいだし、出汁も旨い。味噌煮込みうどんの可能性を再考した訪問でした。機会があればまた是非訪問したいと思う。どうもごちそうさまでした。


まことや

昼総合点★★★★ 4.2



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池田屋

先日は仕事を終えた後、ふと思い立って、最近当域にも進出しつつある「二郎系」のこの店を攻めてみることにした。

二郎系のラーメンといえば、今まではほぼ関東周辺でしか食べられなかった。ので、写真で見たりネットでの情報を見たりくらいで、今までに実物にお目にかかったことはない。いや実はこの近くにある、もう一つの「二郎系」は訪れたことがあるのだが(以下593字略)。


麺食いの私としては以前からそれなりに興味があり、関東方面に出掛けた際に食してみようと考えていたこともあったがなかなか機会は訪れなかった。実は関東訪問時には他に食べたいものがあったというのが真相かもしれんが、んなことはどうでもよろし。

そうこうしているうちに、わが街京都にも二郎インスパイア系の店がちらほら出来てきたわけだ。というわけで、今回あらためて訪れることが出来た。


さて、初めての二郎系だ(この近くの店は、時系列的には後での訪問)。なんだか心の中がウキウキ(死語)してきたぞ。というわけで、入店後に間違いがないように、また店主になめられないようにとネットで再度十分に予習を行い、「ヤサイマシマシニンニクチョイ、カラメアブラキモチ」という呪文もその威力も分からぬまま、すらすら出てくるまでに練習した。もちろん家を出る前には暖かいシャワーを充分に浴び、股の下のポニョ君も念入りに洗った。パンツももちろんとっておきの新品に履き替えて神棚に二礼二拍手一礼をキめ、ようやく出かけることにした。

愛用の原付に乗り、京の街を東へとひた走る。高揚した頬に感じる冷たい風が心地よく、私は大地からの優しさをふと感じた。ああ、世の中とはこんなに優しかったんだ。道端に生えている名もなき草花や、私の前をとろとろ走る車の助手席で気だるそうに鼻くそをほじくるお姉さままでもが何故だか愛おしく思えた。それはさすがに嘘。そういうスタンス。


さてそんな二郎系。やはり西の方にはまだ浸透が薄いのかあるいはたまたまなのか、良い時間であったにも関わらず客はまばらだった。店に入ると右手に券売機があり、「完全セルフでお願いします」とその周辺に箸やらおしぼりやらコップやらが置いてある。

券売機で、デフォルトと考えられる「小(300g)」を購入。300gは全然小さくないぞ、などと心の中で小さくツッコミを入れつつ、カウンターの真ん中あたりの空いた席に座り、そっと食券を深紅のカウンターの上に置いた。店の中はラジオの音だけが淡々と流れる空間で、思った以上に殺伐としている。

あまりの殺伐ぶりになんだか息苦しくなりふと右側をみると、向こうの方では近隣の大学の学生と思しき男性が、モニター越しにしか見たことのなかった量の麺を一心不乱にわしわしかき込んでいる。いやあこれは凄い。つるつる手繰っているのとは全く別次元の麺だ。

とにかく麺のあまりの太さに、私は思わず息をのんだ。似たような太さの麺を以前に見たことがあるが、私の記憶では確か「うどん」という名前だったはずだ。麺の上には親の敵のようにもやしとキャベツが鎮座している。さらにその上には遠目にはゲ○としか思えない物体がちんまりと鎮座しているが、あれが噂の「アブラ」というやつか。

そのうち彼は山のような野菜と麺をかき分け、合間から肉塊を取りだし、一気にむしゃぶりついた。その肉塊の大きさに、私は再度息をのんだ。あれが例の「ブタ」というやつか? 噂では子供の握りこぶしほどの大きさがあると聞いていたが、今私のつぶらな二つの瞳に映っている肉塊は明らかに子供の前腕ほどはあるぞ。

…やめよう。これ以上ガン見していると不審者と思われる。というよりは、ここまでなんとかバレることなく来ている「二郎系の初心者」ということが判明してしまう。そう、ここまでスムースに来たため、店主からはあらたまったシステムの説明はなかった。

ちなみに、私のあとに入店した人はみな「えー、小は300gありまして、だいたい普通のラーメン屋のラーメンの2.5人前です・・・」から始まるシステムの説明を受けていた。二郎系が浸透していない関西ならではの風景なのだろうか。ちなみに私は予習の通りさくさくと食券を買い、躊躇うことなくコップや箸やおしぼりを持って着席したため、それまで何も言われていない。きっと「ジロリアン(恥)が試しに来たな」くらいに認識されているはずだ。


などと動揺を隠しつつまっすぐ前を向いたまま自分で入れたコップの水をすすっていると、黙々と仕事をしていた店主が唐突に私の方を向いた。

「・・・小の方、ニンニク入れますか?」
「あーはいお願いします」

と間抜けに答えてしまった。せっかく覚えてきた呪文はどこへやら、でもあれだけの野菜もアブラもかんべんな。しかしこれではいわゆるどノーマルだが、まあ初回だからいいや、などと私はさりげなく自分に言い訳した。


そしてその時はやってきた。私の前に置かれた丼を、まずはじっくり鑑賞した。私のつぶらな二つの瞳には山盛りになった野菜しか見えないが、まずはこれを食わないと先に進めないのだな、でも野菜自体に味付けはないようだがなんだこの自己矛盾は。

などとぐだぐだ考えつつ、ぐるりと丼を見渡すと、なんとか麺がのぞいているところがあったので、そこからよっこいせと麺をなんとか引っ張り出し、わしっと齧り付いた。

太い。太え野郎だ。まったくうどんだ。だが黄色く、かん水が入っているのでこの太さなら果たして噛めるのか実は差し歯である私の前歯は折れずに耐えることができるのか。取りあえずそのままだと先に進まないのでしぶしぶ口に含む。人生で初めての歯ごたえが歯茎を包む。これが二郎か。おおそうか。

そんなわけでひたすら麺を食べ続けると、減った麺の合間を縫ってようやく野菜がスープに浸り始めた。スープに浸った野菜を時折齧りながら、そのままわしわし麺を噛み続ける。どれくらい時間が経ったのだろうか。ひたすらわしわし噛んでいると、野菜と麺の合間から、子供の前腕くらいある肉塊が姿を現した。なんてこったそういえばこいつの存在を忘れていたぞ。そろそろ私の満腹中枢も限界の警告音を発しているのだが。


…それからの時間は短いようで長いようでよくわからない。しばしの戦いを終え、予習通りに空っぽになった丼をひっくり返さずにカウンターに上げ、自分のいた領域を拭き清め、おしぼりを入り口近くにあったバケツの中に入れると、私は夢遊病者の如くふらふらと外へ出た。

ふらふらと外に出ると、京都の冬の凛とした空気が私を包んだ。ふと見ると、道路の向こう側を歩いていた妙齢のお姉さんが、歩きながら左の鼻の穴に手を当て「ふんっ」と右の鼻の穴から鼻水を飛ばした。


池田屋

昼総合点★★★☆☆ 3.3



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かね井

ようやっと、機が熟してここのレビューが書けるようになった。もう幾度となく訪問して、この店の素晴らしさは充分に知っている。思いが詰まりまくっているのでむっちゃ長いレビューになるのをお許し願いたい。


いつも麺料理ばかりレビューしているが、当たり前だが麺料理以外の店の料理もいろいろと食べている。外国に行った時もいろんなレストランに行った。しかし、私にとっては、「かね井」さんがマイベストレストラン。

その味、空気、もてなし。これより素晴らしいレストランがあることは全く否定はしないが、私自身の「身の丈に合っている」という意味でも、私が麺料理が大好きだということということも含めて、私のベストレストランである。



かね井さんとの出会いはほぼ開店直後にさかのぼる。「旨い蕎麦屋が出来たんや、一緒に食べに行こう」と食べ歩きの好きな友人に誘われて行ったことが初めてである。

蕎麦は大好きなので色々と食べ歩いてはいたが、京都で旨いと思える店に出会うことはなかった。じん六さんはすでに開店されていたと思うが、それ以外の現在ミシュランの星付きのような店はまだ開店されていなかったと記憶している。

そんなわけで、あまり期待していなかった。当時住んでいた左京区から、自転車で向かったのを良く覚えている。

「徒歩かバスか自転車で行くしかないけど、自転車も置くとこないかもしらんね」

と友人は呟いていたが、なんとか店の横の智恵光院通りに置くことが出来た。さっそく店内に入ったが、その設えを見て、これは今までの蕎麦屋とは違うのではないかという確信をもったのだ。

店内には凛とした空気が張ってはいるが、ほど良い心地よさ。いったん席に着くと、意外と寛げる。店内にBGMもなく、鞍馬口通に接しているにもかかわらず表の喧騒も中には入ってこず意外と静かで、店の中を通り抜ける風の音のみが耳をくすぐる。注文を取りに来られるまでしばらく待ったのだが、全く苦にならない落ち着いた空間であった。

最初に訪問した時に何を注文したのかは覚えていないが、初訪問時にはざるそばを頼むのがほとんどなのでざるそばだったと思う。この蕎麦が、またとても旨かった。蕎麦の香り、つゆの旨さ。全てにノックアウトされた。

日本酒のセレクションも素晴らしい。お品書きには明記されていないが、全て近くの「鵜飼商店」セレクション。鵜飼商店さんは純米酒しか置いておらず、しかも全ての酒を自ら足を運ばれて選ばれており、全く外れがない。日本酒もほとんどが冷蔵保存されている。そんなわけで、かね井さんで注文する日本酒は全く外れがない。


それからというもの、私は時間を作っては足しげく通った。何度通っても裏切られることはなく、いつも心地よい満足を頂いて店を後にしたものであった。


そんな私も仕事で京都を離れ、また京都に戻ってきた。京都市内で転居して現在の住居に住まいを定めたのは、実は「かね井」さんや「船岡温泉」、日本酒の「鵜飼商店」が徒歩圏内にあるということが理由の一つであるということは否定しない。


そんなわけで、現在地に転居した日の夕方。また台所用品を荷解きしていない私たちは、一家でかね井さんに繰り出した。夕方の営業時間は17時から19時である。昼間の人気ぶりを知っている私は、開店の30分前には店についていた。実は夕方に訪れるのは初めてだった。予想していた行列は全くなく、時間を持て余した私は近所をぐるりと散歩して戻ってきても、まだ店の前には誰もいなかった。結局、開店するまでの間、並んでいたのは私たちだけであった。

一番乗りで、しかも他にお客さんがいないので、普段は注文を断られていた出汁巻きを含め、散々食べ散らかした。まさに夢のような時間であった。結局他のお客さんは訪れず、あの素晴らしい空間を独占することが出来たのだ。

その快感に味をしめて、結局引っ越してから連日通い詰めた。数日間は休みをとっていたので、その間荷解きはとっくに終わっているのにもかかわらず毎日夕方にかね井さんに通った。夕方はいつもガラガラで、とても贅沢な時間を過ごした。


2010年の秋のある日。私はたまたまインターネットのニュースサイトを見ていた。ぼーっと見ていると、「2011年ミシュランガイド関西 本日発表!」みたいな記事を見つけたのだ。普段ならまずそれ以上見ないであろう記事を、その日はたまたま開いてしまった。そして、そのリストの中に「かね井」という店名を見つけた時は本当に驚いた。

前年度に、京都の蕎麦屋としては唯一「にこら」が選ばれていたのは知っていたが、コースや一品料理が充実しているので選ばれたと思っており、そうでない「かね井」さんが選ばれるなんてことはないと思っていたし、仮に選ばれたとしても店主さんは掲載拒否するだろうと思っていたのだ(この予想は合っており、後日発表されたミシュランガイドを確認すると店および料理の写真は掲載されていなかった。掲載拒否されたお店は写真が載らないのだ)。

さて、正直困ったことになったと思った。ミシュランに掲載されれば、さらに混雑することは目に見えている。家から歩いて行ける場所にある店がミシュランの星付きになったということは喜ばしいことではあるが、気軽に行けなくなるのは困る。

そんなわけで、その記事を読んだその日の夕方にかね井さんを訪問することにした。相変わらずガラガラで、私は今後喧騒に包まれるかもしれない店内で贅沢な時間を楽しんだ。

ミシュラン発売後、予想通り昼間は凄い行列が出来ているのを見た。この食べログに「待たせ過ぎる」などという否定的なレビューが出るようになったのも、「ミシュラン後」からではないだろうか。そのあたりについては他の方が適切なレビューを書かれているので、私は触れないことにしようと思う。


かね井



…ちょっと話が長くなりすぎた。その後も定期的に通ったが、味も空間の素晴らしさも全く裏切られることはなかった。もちろん「年越し蕎麦」もかね井さん。毎年除夜の鐘まで営業されているのだ。ただしここ2年ほどは、ものすごい行列が出来ており時間前には売りきれている。3年前まではそうでもなかったのだが。

というわけで、今年は早めに訪問した。それでも1時間くらいは並んだだろうか。

席に着くと、いつも日本酒と蕎麦前をいくつか注文し、蕎麦を待つ。2-3年前の年越しは大雪で、お客さんもほとんどおらずゆっくりと雪見酒と蕎麦を楽しんだっけ。

そんな私の注文は、いつも鴨ざる。色々と蕎麦を食べてきたが、かね井さんの鴨ざる以上に感動する蕎麦を私は知らない。特に、たった一つだけ入っているつくねが絶品。


突き出しに出てくる塩でまずは蕎麦だけを頂いて、その後鴨汁を堪能する。毎年最後に口にするのはかね井さんの鴨ざるで、私がこの地に住み続ける限りずっと変わらないだろうと思う。今後も店がある限り通い続けるし、いつまでも変わらずあってほしいお店である。


かね井

夜総合点★★★★★ 5.0

昼総合点★★★★★ 5.0



関連ランキング:そば(蕎麦) | 鞍馬口駅北大路駅今出川駅


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ハム丘ハム太

ハム丘ハム太

主に京都のラーメンを食べた日記です。生まれながらの麺食いなので他の麺類ももちろん食べます。